京野 誠 「ひとつえらぶとしたら」

毎日のBetterを目指す〜エンジニアとしてのキャリア、婚活、結婚生活、家事、就職、家族とか〜

海 2

ミカの家はとても遠く感じられた。

メールを再確認し、降りる駅を確かめる。改札を抜けると東口、西口と背中合わせの標識が立っている。看板をよく見るとバス停は東口にあることが分かった。改札前の踊り場の人はまばらだ。

改札部分は二階に位置しており、窓から一階部分のロータリーのようのものが見える。

階段を降りバス停を目指す。一階に降りてもやはり人はまばらで、すれ違いざまにぶつかる可能性はゼロに思えた。東京の人混みの埃っぽさは微塵もなく、カラッと晴れた日差しがコンクリートを暖めている。

事前に指示されたバス停を見つけると真っ先に時刻表を見た。休日の列は平日の半分ほどの密度で、5分前に行ってしまったバスの次は30分後である事実を私に突きつけてきた。私はミカに電話をかけた。隣のバス停で今にも出発しそうなバスが、万が一にも近くを通過しないか確認したかった。

「2番のバスは通らないの。不便でごめんねぇ」

私はすぐにバスを使うことを諦めタクシーを使うことに決めた。

こんなことなら。こんなことなら事前にバスの時刻を調べて、もっと早起きするべきだった。思っても遅い。この世は段取りの下手な人間が損をするようにできている。

家の周辺に目印になるものはないと聞いていたため、私はタクシーに乗り込むとミカの家の住所を告げた。

10分ほど走りまばらな住宅地の小道に入っていくと二階建ての家の前で手を振るミカを見つけた。

「いらっしゃい。遠かったでしょう。田舎でごめんね」

もともと同郷のくせにミカはそんな挨拶をした。私が逆の立場でも同じことを言ったかもしれない。田舎の自覚がある人は、東京から人を迎え入れる時必要以上にへりくだった気持ちになってしまうのだ。

慣れない旅に少し疲れていた私だが、ミカの変わらない笑顔を見て少し元気が出たような気がした。

「どうぞ」

改めて新しく建てたというその家を仰ぎ見る。

なんだかとても大きく見える。

結婚して家を建て、着々と家庭を築くミカを素直に尊敬している自分がいた。