京野 誠 「ひとつえらぶとしたら」

海と空が交わることはあるのだろうか

ないものねだり

先日、「君の名は」という映画を観た。

以下、映画のネタバレはしないつもりだが、神経質な方は読まない方が良いと思われる。

 

まず、僕がこの映画をお勧めしたいのは、現実に疲れた方である(笑)。映画とは少なからずそういう一面があると思うが、この映画はあなたを「飛ばしてくれる」。

人気の秘密はこのポーンと飛ばされる爽快感なのではないかと思ったりする。

ところで、僕は今回、暗闇でノートを取るという実験を遂行した。思った時に思ったことを手探りで書くのだが、意外と可読性は保たれることが分かった。

この映画を観たのは少し前だが、ノートを見ながら僕が感じたことを振り返ってみたいと思う。(ただし、この映画はあまりメモに向かなかったと思う。おそらくそこまで僕の思考が刺激されなかったことが要因だ。)

 

さて、この映画を一言で表すなら「ないものねだり」だと思う。

 

東京と地方。

先進と伝統。

コミカルとシリアス。

純粋と憎悪。

現実と運命。

 

日頃僕らが抱える矛盾。

もしかして…だけど信じたい。

そういう人間の弱さにも強さにもなりうる部分に訴えてくる。

 

あるものを信じる。

信じすぎる。

いつの間にか振り切れる。

あれ、行き過ぎた。

現代の人々はそういうバランス感覚に疎いのではないか。

何かひとつなら簡単だ。

自分で考えなくても良いから。

ないものねだりの中で、どっちつかずに生きるのが辛い。

自分の幸せを考える労力が面倒だ。

 

たとえば、実際、現実の人間関係は疲れる。

純粋に人間を信じて、綺麗な運命を全うしたい。

でも気づいている。

騙したり、騙されたり、それは何も身近な人間関係の話だけではない。

国も、政治も、市場も。

何が正しいのか。何を信じれば良いのか。その価値が揺らいでいるからこそ。

 

本当は信じたい「運命」という魔法を映画は叶えてくれる。

視聴者の願望を達成してくれる。

ああ良かったと胸をなでおろさせてくれる。

一連の、疲れた心の集積所。

 

ないものねだりのバランスが取れて気持ちが洗われた気分になる。

 

そんな気分に浸るのに映画館という場所は良い。

センスの良い音楽を用いた映画ならなおさらだ。RADWIMPSがとても良い仕事をしている。改めて、音楽って大事だなと思う。

 

敢えて気になった点を挙げるなら、「喋りすぎる」点だろうか。

小説などでも往々にしてあるが、説明するような台詞に興ざめしてしまう。

観ている人はそんなに馬鹿ではないのではないかと思う。

 

いずれにしても僕は、上に書いたようなことを大変綺麗にまとめました、という映画だと感じた。