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京野 誠 「ひとつえらぶとしたら」

海と空が交わることはあるのだろうか

海 3

ミカの家へ一歩足を踏み入れると「新しい」匂いが私を迎え入れた。 新しい柱、新しい畳、そして新しい夫婦の雰囲気という漠然とした匂いである。 ひとたび玄関に足を踏み入れドアを閉めると、まるでこの家だけを北風が避け、冬の貴重な日差しが降り注いでい…

海 2

ミカの家はとても遠く感じられた。 メールを再確認し、降りる駅を確かめる。改札を抜けると東口、西口と背中合わせの標識が立っている。看板をよく見るとバス停は東口にあることが分かった。改札前の踊り場の人はまばらだ。 改札部分は二階に位置しており、…

海 1

今日は電車で遠くまで来た。 海には向かっていない。なぜなら埼玉に海はないからだ。 のどかな風景。雲ひとつない真っ青な空。電車の床を流れる影が私を優しく撫ぜながら通り過ぎていく。 車両には私を含めて3人しか乗っていない。くたびれた黄色いソファに…